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使い方から選ばれる扇子の材質と種類



涼を演出する和の文化



日本が発祥の地と言われる扇子は、古くから私たちの生活の中にあり、長い時を経た今も使い続けられています。折りたためばスリムでコンパクトになり、軽いことからそっと忍ばせて持ち運ぶことができます。形状が大げさでないことが、今も愛される理由のひとつなのかもしれません。和服だけでなく洋服にも合うので、年配者のみならず若い人にも愛用されています。そしてその種類も、オシャレなものがあれば、不幸ごとの場でも違和感なく使えるデザインも広く出回っていて、TPOに合わせて選ぶことができます。和柄とも言われる日本独自のデザインを施したものを土産として買って帰る外国人もいるくらいですから、まさに日本の文化のひとつといえるのではないでしょうか。

さて、この日本文化が活躍する季節といえば、圧倒的に夏でしょう。汗ばむ季節になると扇子を手にする人があちらこちらに出没し、季節が進むにつれてその数は増えてゆきます。年齢も性別も問いませんし、場所も問いません。皆、バッグやポケットからさりげなく取り出し、自分に風を送るのです。それぞれが手にしたものの材質や種類は実に多様です。扇面は紙や布が主流で、骨は木を使ったものがほとんどです。しかし、中には鉄やアルミニウムなどの金属を薄くのばしたものもあります。そして柄や大きさもさまざまですが、どちらかというとシンプルで小ぶりなものが多く見受けられます。

冷却スプレーや保冷剤など、エアコンのない場所で活躍するアイテムが次々と生み出される昨今ですが、昔と変わらず日本人に愛されている扇子は、そこから生み出される風だけでなく、扇面の色やデザインでも私たちに涼しさを届けてくれます。



あおぐ、あおがない



ひとことで扇子といっても、その材質や種類は実にさまざまです。どうしても風を送る道具としての顔が強くなりがちですが、それだけが用途ではないということは専門に扱う店に行けばよくわかります。店内にはシックなものからまばゆいものまで、目的に合わせたデザインが陳列されています。

風を生み出す以外でよく目にするのは、日舞や歌舞伎などで使われる舞扇です。時に粋に、時にきらびやかなその姿は、とても目を引きます。すべて演目に合わせたデザインが選ばれていて、勝手に「これ」と言うわけにはいけません。一方茶の湯で、所作の折々に使われる小さめのものは、茶道具のひとつとして数えられます。ほかにも、豪華な絵の入った室内に飾っておくためのものや精緻な飾り彫りが施された香木で作られたものなどがあります。香木製のものは、ひょっとしたら海外土産として貰ったことがある人もいるかもしれません。

目的や用途によって、自ずとサイズやデザインなどが決まってくる扇子ですが、その中には見るだけで心和ませるものや心躍らせるものが数多くあります。選ぶ人のセンスが問われるところですが、いっそ、大切な人への贈り物にしてみるのもよいでしょう。特に海外ではあまり目にしないものなので、外国の人に贈れば喜ばれることは間違いありません。普段使いのものだけでなくインテリアとして選べば、また違った趣が出てきます。もちろん、日本人同士の贈りものにしても大丈夫です。あまたあるデザインの中から、相手の雰囲気に合ったものを選ぶ、これもまた楽しいひとときとなるはずです。



見立ての小道具としての姿



和歌がしたためられた扇の上に一輪のはかなげな白い花、古典文学の名作「源氏物語」に出てくる光源氏と夕顔の出会いの場面に描かれている光景です。今でこそ扇子は風を送る道具ですが、かつては歌を書き付けたり花を載せて贈ったり、と扇ぐ以外の使われ方もしていました。今の時代、こうした風流な使い方をする人は少ないと思われますが、仕事で使いこなしている人たちがいます。話芸を武器にする高座の花、噺家です。この人たちは、実に見事に扇子を扱います。そばを食べる場面では箸として、酒を飲む場面では杯として、たった1本の扇子を開いたり閉じたりしながら場面場面で使うものに見立て、ときには軽く床に打ち付けてその音を効果音として話に深みを添えます。

噺家が高座に上るうえで欠かすことのできないこの扇子は、専用のもので一般に私たちが使うものとは異なります。大きさは私たちが普段使いするものよりも大きく、しかも丈夫に作られています。これは演目の中で、あらゆるものに見立てるため、客の目に入りやすい大きさと少々のことでは壊れない頑丈さが必要だからです。また、扇面は無地で、色は白かベージュのものが多く使われます。あくまでも見立てに使う小道具ですから、変に目立って客の注意がそちらに行くと、本来の目的である噺から気がそれてしまう恐れがあるからです。扇面の材質は紙が使われており、骨の間隔が広くなっています。そのため広げにくく、一般のものよりも扇ぎにくいという特徴があります。

噺家の手の中で変幻自在に変身する扇子ですが、見立ての種類は多くいくら見ても飽きが来ることはありません。今日もどこかで噺家の手によって見立てられ、場面場面に合わせて変身しながらしっかりと息づいています。

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